公衆電気通信ネットワークの構成

現在の規制の背景
  NTT東日本、NTT西日本(以下両社をまとめてNTT東西という)などの公衆電気通信事業者は、それぞれのネットワーク(伝送路設備および交換設備)を持ち、運用して加入者に電気通信サービスを提供している。(それ以外の電気通信事業者は回線を借用(NTT東西のように回線を所有する公衆電気通信事業者に接続してもらい、[NTT東西側からみれば、卸売りし]、加入者にサービスを提供している)
  一般家庭ユーザーや企業ユーザーは、NTT東西の加入者回線(市内回線)に接続しているのが普通であって、直接NTT東西以外の電気通信事業者の回線に接続していることは稀である。したがって、NTT東西は明治以来1世紀以上の長期にわたって、逓信省・電気通信省・電電公社から現在のNTTへと変遷はしたが、市内回線をほぼ独占的に建設・運用してきた。NTT東西以外の電気通信事業者は、一般家庭や企業ユーザーにサービスを提供するには、NTT東西から市内回線(加入者回線)を借りなければサービスを提供することができない(アメリカでは、必ず通過しなければならないビンの口のような設備なので「ボトルネック設備:bottleneck facilities」と俗称されている)ので、NTT東西に対して「接続料(access charge)」を支払って、市内回線を利用している。『電気通信事業法』では、こうしたNTT東西の市内回線を「第一種指定電気通信設備」(電気通信事業法第三十三条 第一種指定電気通信設備との接続)と定義している。移動通信市場(携帯電話市場)の場合では、NTTドコモの設備は「第二種指定電気通信設備」(電気通信事業法第三十四条 第二種指定電気通信設備との接続)と定義している。NTT東西およびNTTドコモは、電気通信サービスの市場では、「市場支配力(dominant power)」を持つとされており、他の電気通信事業者と指定電気通信設備を接続する義務を課されている。これらの指定電気通信設備を接続する際の接続料および条件の設定に関しては、総務省の認可が必要となっている。では、こうした規制の枠組みの背景となっている公衆電気通信ネットワークの構成をみてみよう。

現在の網構成
  1999年7月の県内・県外分割再編
 NTT東西は、都道府県を越える通信をしてはいけないという業務区域規制が『日本電信電話株式会社等に関する法律』(NTT法)によって課されている。NTTの再編成の結果、各都道府県の上位局だった中継系の区域の基本単位である中継区域(Zone Area)にあって、群区域(Group unit Area: GA)からの通話量を集束・中継するZC(Zone Center)があったが、現在は区域内中継局(IC: Intrazone Tandem Center)と呼ばれるようになり、NTT東西は、このIC以下の交換業務を受け持つことになった。現実のネットワークは必ずしも行政区域とは一致しているわけではないが、NTT東西による県間通信は禁じられているので、NTTコミュニケーションズが運営する特定中継局 (SZC: Special Zone Center) に接続して県間通信を行っている。このため、「フレッツADSL」「Bフレッツ」などのサービス向けに東西会社が構築したIP網は、都道府県の範囲内(一部例外はある)に限られた「地域IP網」であり、それをNTTコミュニケーションズの特定中継局7局で接続するようにして、他の電気通信事業者のトポロジー(ネットワーク構成)と同じになるようにネットワークが構築されている。
 一方、NGN(次世代ネットワーク)では全国一体のIPネットワークとなっているので、都道府県の範囲内に限定するために無理やり「地域IP網」を維持し続けるのは、公平競争維持のためというドミナント規制上の制約を考慮するのでなければ、単なる無駄であり、レガシーPOTS(ポッツ:Plain Old Telephone Systemの略で、古い昔のアナログ黒電話)という蒙古斑を引きずっているだけのことである。NGNが全国に拡大されれば、それ自体が「全国IP網」となってしまうので、「地域IP網」はその内部に包含されてしまい、存在する意味はなくなる。

交換機階梯(NTT東西)
区域
交換機
備考
単位局(Unit Center:UC) 単位区域(Unit Area: UA) 加入者階梯交換機(Local Switch: LS) NTTドコモの加入者階梯交換機(Mobile Local Switch: MLS)
群局(Group Unit Center:GC) 群区域(Group Area:GA) 加入者線交換機(Toll Switch: TS)  
区域内中継局(Intrazone tandem Center:IC)54カ所 都道府県 中継階梯交換機(Toll Transit Switch: TTS)  
交換機階梯(NTTコミュニケーションズ)
特定中継局(Special Zone Center:SZC)7カ所 特定中継区域(Special Zone Area: SZA) 関門階梯交換機(Gateway Switch: GS) NTTコミュニケーションズが県間を接続する
相互接続点 Point of Interconnection:POI 相互接続用関門交換機(Interconnecting Gateway Switch:IGS) 相互接続点に設置されたIGSで、NTT東西のネットワークをNTTコミュニケーションズ以外の電気通信事業者のネットワークとを接続する